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 ◆ATACが指導できる専門分野シリーズ

 中小企業の弱みは人材の層が薄いことです。数十名の企業の技術スタッフは数名以内が通常の姿ではないかと思います。この人たちは有能であるとは言え、これだけの人数で多くの工学の専門分野を網羅することは不可能です。
 従来からの仕事の継続には知識に不足はなくても、新しい製品開発や新製造プロセスの開発となると。これまで扱っていなかった専門分野が必要になります。このときの緊急の対策は、コンサルタントの助けを借りる、大学・研究機関の智恵を借りるなどですが、仕事が終わるとまた元の状態に戻ってしまいがちです。
 そこで、技術スタッフにより広い専門分野の知識を習得してもらってより高度な活躍をしてもらおうと、ATACでは専門教育を指導する事業を行っています。


 このページは、ATACニュースに連載中の「ATACが指導できる専門分野シリーズ」からお届けしています。
 ATACニュース購読希望の方は、事務局までご連絡下さい。

 その1 材料
 その2 設計
 その3 機械技術者のための電気
 その4 電子回路〜アナログ電子技術の棚卸と再構築
 その5 地球環境に貢献する繊維材料 
その1「材料」
 「中堅・中小企業へのATAC提言集(5) 材料選択の手引き」では、金属、セラミックス、プラスチックスを取り上げています。このうち、例えば金属だけ、それも鉄鋼材料だけ、或いは金属材料全般など、いずれにも対応可能です。金属では特に状態図、金属組織、熱処理、強度など特性と並んで、力が掛かったときの材料の変形と破壊などを重点に材料選択に役立つ基礎知識を指導します。 
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その2「設計」
 改正消費生活用製品安全法が今年(09年)4月から施行されました。08年11月に改正されたものです。この改正の原因になったのは07年8月に約30年以上前(1970年)に造られた扇風機が原因の火災で2人が亡くなったことによるものです。

 今回の改正の要点は、
 @長期間の使用に伴い生ずる劣化(経年劣化)により安全上支障が生じ、特に重大な危害を及ぼすおそれの多い9品目について点検制度が設けられました。
 A経年劣化による重大事故発生率は高くないものの、事故件数が多い製品5品目について、設計上の標準使用期間と経年劣化についての注意喚起等の表示が義務化されました。

 前記の扇風機の場合、メーカに法的な責任はありません、製造物責任(PL)法による損害賠償責任が企業に生じるのは対象製品の製造後10年以内です。30年間動いていたという事実は、一般的には品質の良さを示す好例ですが、しかし出火や、人身事故の発生は最大のリスクになります。製品の設計技術者が品質に注意しなければならないのは、当然ですが、その製品が働いている時のみでなく、廃棄された後も安全性に配慮することが求められます。
 「中堅・中小企業へのATAC提言集 (6) 設計を考える」では製品設計の際に設計された機器や製・商品が本当に設計者の意思どおり品質のよい、またそれにふさわしい原価で製作され、そして顧客が安全・安心に使用し、満足できるものになっているかなど、設計にまつわる周辺のことを書き表したもので、多くの失敗から生まれたノウハウ集または設計のべからず集といった類のものです。
 ATACではこの提言集をテキストとして、最近の動きも交えて、社内の勉強会、研修会などでお話することが出来ます。なお、「ATAC提言集」をご希望の方は事務局にご連絡下さい。
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 その3「機械技術者のための電気」

多くの優れた機械技術者も電気と言うと途端に思考が停止するといった経験をされたことはないだろうか? 殆どの方は子供の頃、豆球を乾電池で点灯させた経験をしていると思う。以後難関の試験を乗り越え電気以外の専門家となると、電気はチンプンカンプンと自他共に認める人も少なくない。これって何故そうなるのだろうと筆者は機械やに電気を教える時、疑問に思った。電気が嫌いの相手に、電気が好きになる手法が無いかと、ふと学生時代に学んだ自動制御の古い文献を再読すると、あるページで瞬間目から鱗が落ちる経験をした。
それは下図のようなバネK、重りM,ダンパーfの振動系を電気部品要素で等価的に表した図である。




図から機械やさんは位置的変化量(y)を変数として要素形状記号で式を構築している。対して電気は形状変化でなく目に見えない電荷(クーロン:Q)を変数として部品機能記号で表記している。外形・外面的変化で理解する機械技術と、外形等の変化はないが、各要素が果たす内容(意味)で理解する電気技術の特徴があることに気づいた。電気を学ぶ場合、まず頭に描くことは形・寸法等外形的なこと即ち表形(筆者の造語)で理解せず、電圧・電流・電荷が成す現象、即ち表意(筆者の造語)で理解して学習することを勧めている。以後、こうした指導法が役立った場面を多く経験した。

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 その4「電子回路〜アナログ電子技術の棚卸と再構築」
 ディジタル技術全盛の今日ですが、信号の入り口と出口はすべてアナログであり、ここに多くの電子技術者がスキルを発揮する場があり、また電子機器の付加価値が多く存在します。
学校では教えない、しかし機器開発では重要な技術に演算増幅器(オペアンプ)とEMC(electro-magnetic compatibility電磁環境両立性)があります。

 オペアンプは約40年前に開発され、幅広く使用されていますが、中身も特性も理解しないままブラックボックスとして扱われることが多く、これがオペアンプが広く普及した理由でもあります。たしかに、教科書に書かれているオペアンプは理想オペアンプとして様々な応用回路や理論式が示されていますが、実際の汎用オペアンプは“理想”とはほど遠い特性しか示さず、高度の応用には適さない場合も多く見られます。CMOS化、低電圧動作、高周波用、低ノイズ品、入出力フルスイング(Rail to Rail)など、今でもオペアンプの技術開発は活発であり、内部の回路動作の仕組みを理解し、最新のオペアンプの特性について再習得すると応用範囲は広がり、優れた回路特性を得ることができます。

 次に機器全体で重要なのがEMCです。試験は最終の実装基板、機構、筺体が揃って、初めて実施することができ、不適合が判明すると設計変更や部品追加のコストアップが生じるだけでなく、生産・販売計画にも重大な影響を与えます。EMC対策は、試作が完成してからの対処療法では効率が悪く、想定以上のコストと時間を要するので、製品開発の初期段階から十分に配慮し、可能な対策を織り込むのが鉄則です。EMC対策は電子工学理論に沿った技術であり、既知の対策技術、最新の対応部品を活用するのが解決の早道です。

これらの最新のアナログ技術を再構築することは経営的にも有効と思われます。

 左写真は初期の代表的なオペアンプであるフェアチャイルド社の709です。懐かしいメタルケースに入っており、当時は宝物のように扱いました。















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 その5「地球環境に貢献する繊維材料」
 
 日本では斜陽と言われる繊維産業ですが、各メーカーは600℃以上の耐熱繊維、水より軽く鉄より強い繊維、ナノサイズの極細繊維等、世界最先端の高機能繊維を開発し、衣料、産業資材、医療介護資材として利用されています。

 身近な例でゴルフを見てみますと、軽量シャフトを振り、冬は嵩張らない発熱繊維下着、夏はクールタッチのウェアー、雨天時には蒸れないレインウェアーを羽織るなど日本発のハイテク技術から生まれた製品を使っています。
 機能繊維のうち、ここでは地球環境に貢献する材料としての繊維の使用例を紹介します。

先ず第1に環境を保全し浄化する分野があります。焼却炉を高温にしてダイオキシンの発生を抑制していますが、耐熱繊維製のバグフィルターがそれを可能にしています。
 水の浄化では、海水淡水化や家庭用浄水器に中空糸が使われていますが、ミクロに分散した油と水の混合液を極細繊維の膜は、瞬時に高性能に分離することが可能です。

 第2に省エネ・クリーンエネルギー分野です。
 風力発電は今や“エコ“環境の代名詞になりましたが、あの大きな風車は軽くて強い繊維材料で出来ています。これらの材料は軽量化による燃費改善を図る航空機に採用されていますが、自動車の軽量化に役立つと期待されています。

 第3の分野は化学物質による環境汚染防止分野です。アスベスト使用禁止に伴い建築資材に各種繊維材料が使われていますが、農業部門では除草剤不要の防草シート、その他有機溶剤の吸着回収装置にも繊維が使われています。

 第4の分野は生活環境改善・自然との共生を図る分野です。ビルの屋上の緑化が冷暖房費の低減に有効ですが、人工土壌として吸水性シートなど多くの繊維材料が使われています。
綿等の天然セルロース系繊維は生分解性を有し、農業資材に使うと使用後は土に埋め込むと自然にかえります。最近トウモロコシが原料のポリ乳酸繊維が完全リサイクル繊維として幅広い用途に使われるようになりました。

 生活資材としても、洗剤不要なフキン、繰り返し使用可能な介護用オムツ、省エネシャツ等があります。
環境をキーワードに、新しい繊維で、商品開発に取り組まれることを期待しています。

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